ネットの海の漂流者

インターネット上で話題になっている問題を検証しています。

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健康で文化的な最低限度の生活とは

   

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最低限度の生活について

BaramakiFPS 生活, 社会 生活保護費って最低限の生活を保護するためのお金では?節約で貯めたお金とはいえ、嗜好品等に消費しているのは納得出来ないんだけどなぁ…昼食を抜いて貯めたとか本末転倒なのでは?最低限の生活は? 2011/01/25

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生活保護で保証されるのは、最低限の生活ではなく「健康で文化的な最低限度の生活」です。

ch1ken 今以上にコストがかかってでも、衣(古着)食(コンビニ廃棄)住(際物アパート)を現物支給にすべき。必要なのは、不正受給の動機を与えないこと・生活保護状態から抜け出す動機を持たせること。 2011/01/24

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これについてですが、web上で分かりやすい資料を紹介しておきます。
面白い資料なので熟読推奨。
なお、現物支給の問題点については次のエントリーで書きます。

-首都圏・若年単身労働者世帯の最低生計費試算中間報告

まず、生活保護のお金は最低限の生活を保護するためのお金ではなく、「健康で文化的な最低限度の生活」を保護するためのお金です。
上の資料において健康で文化的な最低限度の生活についてはこのように解説されています。

3.最低生活の保障

 「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するためには、どれだけの収入が必要かが問題となるが、ただ単に収入の水準だけが問題となるのではない。その収入によって「どういったことができるのか」「どういった状態になりうるのか」といった「生活の質」が問題となる。その最低限保障されるべき「生活の質」として以下のことを考えた。

 第1に、「適切な栄養をえているか」「雨露をしのぐことができるか」「避けられる病気にかかっていないか」「健康状態にあるか」といった基本的な健康・生命を維持するための「生活の質」(1998年ノーベル経済学賞受賞者であるアマルティア・センの言う生活の「機能」、アマルティア・セン著、池本幸生・野上裕生・佐藤仁訳『不平等の再検討』岩波書店、1999年参照)を確保すること。

 第2に、「読み書きができるか」「移動することができるか」「人前に出て恥をかかないでいられるか」「自尊心を保つことができるか」「社会生活に参加しているか」といった社会・文化的な「生活の質」(アマルティア・センの言う生活の「機能」、前掲書参照)を確保すること。

首都圏・若年単身労働者世帯の最低生計費試算中間報告

参考資料

異論はあるところですが、生活保護で保証される「健康で文化的な最低限度の生活」とはこの様な生活をさすと僕は考えます。
BaramakiFPSさんは納得できないかもしれませんが、嗜好品は、上の資料の第二の要素に該当します。

また、ch1kenさんの「生活保護状態から抜け出す動機」というのは、有効性は別として、「人前に出て恥をかかないでいられるか」「自尊心を保つことができるか」という点では問題があると思います。
僕個人としては、「衣(古着)食(コンビニ廃棄)住(際物アパート)」でもストレスなく暮らすことが可能ですが、一般論としては、それでは嫌だなと思う人が多いのではないでしょうか?

また、僕はch1kenさんの方法については、有効性にも疑問を持っています。
生活保護からの脱出というのは、基本的に経済力を付けるということですが、最近の経済状況を見るに、「自立した生活を送ることが可能な報酬を得られる職」というのは限られています。

参考資料

全体のうち何人かはイス取りゲームで負けるんです。
個人が頑張ってゲームに勝ったとしても、社会全体を見れば、ゲームに負ける人がいることは変わりません。
誰かが頑張って椅子を取ったら、その分他の誰かが落ちてくるわけです。
結局被保護者が入れ替わるだけで、問題は何も解決しないと僕は考えます。

要するに、個人の努力だけではなく、パイの拡大がセットでなければダメという話です。

生活保護はある意味経済問題である



(クリックで拡大)
こちらの図を見てば分かるように、生活保護問題には経済状況が反映されます。
個人の努力でどうにかなる範囲は限られています。

参考までに

-生活保護関連統計資料等まとめ
-一人親世帯の貧困についてメモ。

 - 生活保護

Comment

  1. いも より:

    ぜいたく品にかける消費税をガツンと上げてみるのはどうかしら
    もし生活保護費でぜいたく品を買うなら50%くらいの消費税を払ってもらう。ぜいたく品に使われる、不正(笑)な保護費がびっくりするほど多いなら、いっぱい国庫に返ってくる
    テレビはどうか、パソコンはどうか?生活保護者がパソコン持ってたらぜいたくという人がいるかもしれないけど、同じ口で「パソコンに50%課税されたら生きていけません」とか言い出すかも…

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リソースの振り分け方が極端な人の基準を採用するのは死亡フラグ

前回に引き続き、あの発言について。

pukuma 吉村哲彦
日本は生活保護の受給者に海外旅行までさせているおめでたい国ですね。生活保護は給付水準を切り下げるべきだ。ぎりぎりの生活しかできない程度まで締め上げれば不正受給者が激減するだろう。1日の食費など(私と同じ)300円もあれば十分です。

Twitter / @吉村哲彦: 日本は生活保護の受給者に海外旅行までさせているおめで …

生活保護を受けている人が海外旅行を行くのが問題?

うーん。今時海外旅行なんてただでいくこと可能じゃないですか。
Googleで、「懸賞 海外旅行」と検索して、ポチポチ押すだけです。

ちょっと気合が入った商店街の福引で特賞を狙うというのもありです。
海外旅行に行くことを理由に生活保護費が過剰である、という論はいささか飛躍があります。

追記

誤解をうけやすいという指摘を受けたので追記します。
生活保護を受けている人は180万人程います。
確率論的には誰か一人くらいは懸賞に当たっていると思います。
で、そのような特殊例がピックアップされている可能性もあるから、ちゃんと調べないと、根拠にはならないよという話です。

何かが豪華ならばどこかを削っている

ちょっとおさらいをしてみましょう。
生活保護家庭の生活費というのは住んでいる地域や家族形態等を基準に計算されてます。
月々の生活費が決まっていて、それでやりくりをするというのは、一般家庭と同じです。
どこかに豪華なお金の使い方があるとしたらそれは、他の支出を削って捻出したということです。
(所得隠し等の不正行為をしていないなら、ですが)
問題の被保護者が「生活保護費を使って」海外旅行に行ったのならば、それはやり繰りの結果です。
その人は海外旅行の代償に他では相当の不自由をしたはずです。
それこそ一日300円生活をしていたのかもしれません。

一点豪華主義の被保護者

一点豪華主義の被保護者はしばしばバッシングされます。
以前、とある掲示板で、クラスで一番ゲームソフトを持っている子供が、実は生活保護家庭の子供だった、という話題を見たことがあります。
そこでは生活保護家庭の子供がゲームを持つのは贅沢だというバッシングが行われていました。
僕はその時偶然、問題の被保護者のSNSページを特定して、日記を読んだのですが、実態を知ってこれは全然問題ないと感じました。

その方は、非正規雇用で長時間働いていて、給料が安いために生活保護を受けていたそうです。
子供は家に一人でいる時間が長く、その子の寂しい気持ちを減らすために、ゲームソフトを買い与えていました。
その費用は自分の昼飯を抜いて、捻出していました。
子どもの学校でマジコンが流行っており、使えばお金を払わなくてもゲームが出来ることは知っているが、子供にはそういう事を覚えてほしくないのでお金を払ってゲームソフトを購入している、という趣旨の発言もあってなるほどなと思いました。
要はこの事件、そのクラスの「普通の家庭」の親がゲームソフトを買わず、マジコンを使っていたため、結果的に生活保護世帯の子供が一番ゲームを持っていたという話だったんです。

勘違いされがちなのですが、生活保護は働いていても貰えるんです。
で、働きながら生活保護を貰っている人は、勤労控除があり、働いてない被保護者より、ちょっとだけ懐に余裕ができるんです。
月の生活費で1万円から二万円くらいは増えるはずです。
働いているために他の生活保護世帯よりも生活費が多い家庭で、親が一食抜いてお金を貯めた。
これでゲームを買うだけの余裕でることがおかしいとは僕は思いません。
働いている人が、昼飯を抜いて、それでもゲームも買えない様な最低生活費(←専門用語です)設定をしたならば、働けない生活保護者は生きて行くことが困難になるでしょう。

お金をかけない生活には手間隙がかかる

前回取り上げた、一日300円生活は健康に悪そうですが、世の中には食費一ヶ月一万円以内でで「バランスの良い」食生活を送っている人達がいっぱいいます。
はてなブックマークで指摘していた方もいましたが 食費一万円を目指すなんかは有名です。
他にも倹約系のブログ記事がいっぱいあるので興味がある人はGoogle先生に聞いてみてください。

さて、このバランスの違いがどこから来ているのかというと、金銭以外のコストをかけているかどうかです。
スーパーの閉店セールを狙うというのも、まとめ買いして下処理をして保存するというのも、自炊するのでさえ手間暇がかかります。
食費を一定以下に減らしつつ、バランスが良い食事を作るには、こういうメンドクサイ作業が必要になります。
さて、一年365日この手間を払える人が何人いるでしょうか?
……そんなに多いとは思えません。

手間をかけられない人に食費節約生活を強要したら何が起こるか

やはり手間隙かけてバランスが良い生活を送る人はそんなに多くないでしょう。
インスタント食品やジャンクフードに依存する方が増えると思います。
まさに前記事の一日300円生活的な食生活です。
そして、高確率で体調を崩すでしょう。
生活保護の医療費は全額公費負担です。
せっかく食費を減らしても、医療費が増えてはなんにもなりません。

出費は食費だけではない

どんな出費でも極端に切り詰める人というのはいます。
狩猟採集農耕でバランスの良い食事を作る人、服を全部自作する人、新聞もインターネットも図書館で見る人、塾に行かせず子どもの勉強を自分で見る人。それらのお金の節約は、金銭以外のコスト=手間暇 をかける事で成り立っています。
こういう手間のかかる作業は、頑張れば一つくらい実行可能かもしれませんが、全てを実現するのは不可能です。
一日は24時間しかなく、人間の体力気力も有限だからです。

逆に飯はインスタントラーメンで構わない人、服は一番安い古着でいい人、新聞もインターネットも見ない人、教育など中卒で充分な人など、コスト自体をかけない人もいます。
そういう人は大抵は、節約したコストを自分の重視する分野に当てはめて生活しています。
全ての支出を「それに価値を認めない人」の基準で決められた場合、人間としての尊厳を保つことは困難です。

何にせよ、リソースの振り分け方が極端な人間の基準を、一般的な基準とするべきではありません。

まとめ

1.現代日本では、金がなくても運がよければ海外旅行など行ける。
2.人間が必死になってリソースの集中を行えば、特定の分野で豪華なことをすることは可能だが、それは必ずしも贅沢を意味しない。
3.極端な金銭的節約を主張する人間は、無茶を言っているのであり、要求を飲めば生きていけない。

僕の結論

食費を一日300円に抑えろ、クラスの要求を全ての支出で飲める人間などほとんどいない。
生活保護受給者(被保護者)が海外旅行に行くことは、生活保護費が過剰であるという理由としては弱い。
無茶を言うな。

リファレンス

生活保護についての大雑把な理解に役立ちそうな資料は、僕の前のブログに置いてあります。
[生活保護]記事一覧 – 情報の海の漂流者
気が向いたら読んでみてください。

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