ネットの海の漂流者

インターネット上で話題になっている問題を検証しています。

*

高校入学率60%の話

   

-自由主義なら民族教育は公費で – 地下生活者の手遊び
-移民への民族教育/言語教育は果たして必要なのか? – Danas je lep dan.
に関連して、民族教育、移民教育の一例として在日ブラジル人の教育についてまとめます。
この分野で具体的な数字を上げた研究としては
-貧困研究 Vol.3(amazon) 楽天
に掲載された、在日ブラジル人世帯の貧困、が詳しいので該当箇所を要約してみます。
2009年の雑誌なので、興味が有る方は最新のデータを参照してください。

**収入
2006年浜松市で実施された南米系外国人生活実態調査によると、在日ブラジル人の一人当たりの税込月収は22万5000円。世帯年収は33万
日本全体の一世帯あたりの平均所得月額は2006年で47万2000円(国民生活基礎調査)

**教育費
ブラジル人学校は授業料が月に25000~40000円かかり、マイクロバスによる送迎費用も取られる。
国内の殆どのブラジル人学校が各種学校としても認可されていないため、補助金や寄付金を得るのが困難。

**仕送り
豊橋市のとある団地ではブラジル人の40.5%が母国に送金を続けている。
うち5万円以上送金しているのは67.3%、月10万以上送金が38.8%。

教育費や送金を除いた家計が厳しい。
非正規雇用が多いため不安定な就業形態で生活を維持し続けなければならない。

**教育について
在日ブラジル人は家族で生活するのが基本で新たに家族を形成し子どもを持つ場合も多い。
そのため14歳以下の子どもの数は朝鮮韓国籍や中国籍を超え、外国籍の中で一位。(法務省在留外国人統計)
***ブラジル人学校

2007年末時点で数の上では朝鮮学校を上回っていた。
ポルトガル語を学びポルトガル語でブラジル式の教育を受けることが出来る。
しかし、ブラジル人学校の多くがが日本では学校として許可されていないため、無学歴扱いになる。
ブラジル人学校で学んだものは学歴と日本語能力がネックになり就職に大きなハンデをもつ。

***公教育
第二言語として日本語を教える方法、教材、教員育成の明確なシステムが我が国に存在しないため、日常言語は習得できるようになるが、学習言語まで獲得するのはなかなか難しい。
その結果学力が問題で進路に制限を受ける。
日本人の子どもの高校進学率は95%を超えているが、ニューカマーの子供たちで高校に進学できる子どもたちは限られている。
2007年に浜松市で行った公立学校でのヒヤリングによると定時制を含めた高校進学率は60%程度(これは高い部類のようだ)。
外国人生徒を対象とした特別選抜や、漢字にルビを付ける等の特別措置を実施する都道府県が大半であり、徐々に高校進学率も上昇しているが、それでも60%。

**以上で要約終わり。
***まとめ(ブラジル人学校)
ブラジル人学校では経済的に厳しい世帯が、一般的日本人に比べて割高な教育費を要求されています。
各種学校としての認可が下りていないため助成金等のサポートが充分でないのもその理由の一つです。
リーマンショック以降の派遣切りの影響で教育費を払えなくなった世帯の子どもがどんどん学校をやめていきました。
それにともない、認可が下りていないため助成金等が少なく、授業料収入に依存していたブラジル人学校はどんどん潰れていきました。
ブラジル人学校のカリキュラムは他の学校と互換性がなかったため、多くの子供たちの教育はそこで停止してしまいました。

各種学校の審査基準については、緩和しようという動きもありますが現状では充分ではありません。

経営難に陥っている県内のブラジル人学校を支援するため、滋賀県は9日、学校教育法に基づく各種学校の審査基準を緩和し、学校の運営主体が法人認可を受けられるようにする方針を明らかにした。

 開設時の運転資金の自己資本率について、現行の「3分の2」を全国で最低水準の「6分の1」に引き下げ、自己保有が原則とされた学校用地や校舎についても借用を認める。東海地区などでは既に、同様の〈規制緩和〉を実施している県があるが、関西では初めて。県は来年1月にも新基準の運用開始を予定している。

ブラジル人学校 認可緩和…滋賀 : ニュース : 教育 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

**まとめ(公教育)
日本の公立学校は、日本語を母語としない子どもに対するカリキュラムが不十分なため、在日ブラジル人の子どもの多くが、落ちこぼれてしまいます。
高校入試という壁を突破できないわけです。
(私立学校には全員入学できるが経済的に無理、公立学校は競争が激しくて無理、というケースも含まれる)
学習レベルの日本語が読めない、書けない。
もしくは読めるようにならない、書けるようにならないというのは成績に直結します。
高校入試の問題文と回答をを英語化にしたら、どれ位の人が正しく回答できるかを想像すれば、どれだけ大変かが分かると思います。

その結果、高校進学率60%という数字が出てくるわけです。
なんとか入試を突破しても、入学後に語学力や経済問題で辞めていく人も少なくなく、問題となっています。
アルバイトでさえ「高卒以上」を要求される日本において、高校卒業までの間に多くの人が振り落とされる状況というのは就活死亡フラグ的な意味を持ちます。

少し前にアニメ化して話題になった『バカとテストと召喚獣』という作品がありましたが、そこには漢字が読めないために文系科目の成績が壊滅的な島田美波というキャラクターがいましたが、作品中で美波の抱えていた問題を、現実の子供たちも抱えているのです。
バカとテストと召喚獣 第2巻 [DVD]
-cf: 『バカとテストと召喚獣』に見る、学校教育における漢字弱者の排除 | LUNATIC PROPHET

こうしたことを調べていると、「外国人」に対しては個々の民族教育どころか、大和民族教育でさえ達成出来ていない現状が見えてきます。
これは典型的な貧困の再生産といえます。

**高校無償化は対象外のケース多し
学力問題はともかく、経済問題は高校無償化で解決するんじゃないか?という意見もありますが、ブラジル人学校の多くは各種学校にさえ認可されていないので高校無償化の対象外です。

2011年1月7日

 菅直人首相は年頭会見で「今年を開国元年としたい」と宣言した。ところが文部科学省が「高校相当」と認め、大学入学資格もある四十一の外国人学校のうち、二十八校が高校無償化の対象から漏れている。制度の矛盾はないのか。外国人学校関係者らはどうみているのか。現場を歩いて考えてみた。 (篠ケ瀬祐司)

東京新聞:「高校相当」外国人学校、無償化に漏れ 揺れるブラジル人学校:特報(TOKYO Web)

詳細については
-全てのブラジル人学校に高校無償化適用を!! – vanacoralの日記
参照のこと。
高校無償化に関しては朝鮮学校以外にも除外されているところがあるわけです

 - 教育

Comment

  1. 通りすがり より:

    まず必要なのは日本語教育だと思うのですが。
    ポルトガル語で、ポルトガルの勉強をするのではあれば、
    ブラジルが費用負担するべきかと思います。

    教育は投資なわけで、今後日本人として税負担してくれるという期待の基に
    公教育はなりたっているのでは?
    日本で働いてもらうため、日本を好きになってもらうために
    日本語教育を充実させると言うのであれば問題ないかと思うのですが、
    ポルトガル語で公教育をというのは違うのではと思います。

  2. E より:

     高校進学率60%というのは、不就学にならずに、中学3年まで日本の学校に在籍した人の中の割合です。つまり、小学校や中学校で不就学になった児童・生徒、ブラジル人学校に通っている児童・生徒は含まれていません。実際の高校進学率は3割以下だと思います。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

  関連記事

関連記事はありませんでした